【2026年版】従業員が無断欠勤で連絡不能のときの対応手順|社労士が解説
社労士 鈴木 貴雄
東京都社会保険労務士会
この記事の執筆者:社労士 鈴木 貴雄
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この記事のポイント
- 従業員が無断欠勤を続けて連絡が取れないときは、安否確認と出勤の督促を記録に残すことが最初の一歩です
- 会社が一方的に解雇する場合、原則として30日前の予告または予告手当が必要です。「2週間以上の無断欠勤で出勤の督促にも応じない」場合は、労働基準監督署の解雇予告除外認定の対象となり得ます
- 退職日が決まったら、社会保険は5日以内、雇用保険は10日以内に資格喪失の届出が必要です
- 就業規則に「無断欠勤が続いた場合の扱い」を定めておくと、いざというときの判断がしやすくなります
「昨日から出社せず、電話にも出ない」「メッセージを送っても既読にならない」。従業員が突然、連絡不能になる事態は、業種や規模を問わず、どの会社にも起こり得ます。
このとき、対応を急いで「もう来なくていい」と告げてしまうと、後から解雇をめぐるトラブルになることがあります。反対に、何もせずに放置すると、給与や社会保険料の扱い、後任の手配、他の従業員への影響が大きくなっていきます。
無断欠勤の背景には、体調不良、家庭の事情、職場の人間関係、事故や事件への巻き込まれなど、さまざまな事情が隠れていることもあります。会社としては、安否の確認を最優先にしつつ、手続きは段階を踏んで進めることが大切です。
本記事では、従業員が連絡不能になったときの対応を、「初動」「督促」「退職・解雇の整理」「各種手続き」の順に、実務で使える文例やチェックリストとあわせて解説いたします。
※本記事は2026年10月23日時点の情報に基づいています。
対応の全体像:5つのステップ
連絡不能の従業員への対応は、次の順番で整理すると迷いにくくなります。
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| ① 初動 | 本人・緊急連絡先への連絡、安否確認 | 日時・方法・結果を記録する |
| ② 督促 | 出勤を求める書面を送る | 就業規則の根拠と回答期限を明記する |
| ③ 出口の整理 | 本人からの退職の申出か、会社からの解雇かを整理する | 解雇なら予告または予告手当、または除外認定 |
| ④ 手続き | 社会保険・雇用保険の喪失届、給与精算、私物・貸与品の対応 | 期限のあるものから進める |
| ⑤ 再発防止 | 就業規則・緊急連絡先の見直し | 次に備えて規程を整える |
【最優先】安否確認と記録を残す
無断欠勤の初日、2日目の段階では、「退職」や「解雇」を考える前に、まず本人の安全を確認することが優先です。事故や急病で連絡できない状況も考えられるためです。
最も大切なのは、「いつ・誰が・どの方法で・何をして・どうなったか」を記録に残すことです。後日、解雇や退職の扱いを説明する場面で、会社が誠実に対応した証拠になります。
初動で行うこと
- 本人の携帯電話への架電、メール・チャットでの連絡(複数回、時間帯を変えて)
- 履歴書や入社時の書類に記載された緊急連絡先、身元保証人への連絡
- 必要に応じて、自宅への訪問(安否確認が目的であることを伝える)
- 連絡を試みた日時・方法・相手・結果の記録(簡単な一覧表で構いません)
事件や事故の可能性が高いと感じる場合は、警察への相談も検討します。
連絡記録の記入例
| 日時 | 担当者 | 方法・相手 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 10月6日 9:30 | 総務 〇〇 | 本人携帯へ架電 | 応答なし。留守電に伝言 |
| 10月6日 17:00 | 総務 〇〇 | 緊急連絡先(家族)へ架電 | 「昨日から連絡がつかない」との回答 |
| 10月7日 10:00 | 店長 〇〇 | 本人へメール・チャット送信 | 既読なし |
| 10月8日 18:00 | 店長 〇〇 | 自宅訪問 | 不在。ポストに連絡依頼のメモを投函 |
出勤を求める書面(督促状)を送る
電話やメールだけでなく、書面でも出勤や連絡を求めておくと、後の手続きで役立ちます。後述する解雇予告除外認定の基準でも、「出勤の督促に応じない」ことが要件に含まれているためです。
書面には、「無断欠勤の事実」「就業規則上の根拠」「回答の期限」を明記します。届いたことを後から示せるよう、配達記録が残る方法で送るのが一般的です。自宅だけでなく、緊急連絡先宛てにも連絡することをおすすめいたします。
督促状の文例
〇〇〇〇 様
あなたは、令和8年〇月〇日以降、会社への連絡なく出勤されていません。
会社は、〇月〇日以降、電話・メール等により複数回ご連絡しましたが、連絡がとれておりません。
つきましては、令和8年〇月〇日までに、下記へご連絡のうえ、出勤できない理由をお知らせください。
また、出勤が可能な場合は、速やかに出勤してください。
期限までにご連絡がない場合は、就業規則第〇条に基づき、今後の取扱いを検討せざるを得ません。
体調不良など、やむを得ない事情がある場合は、その旨もお知らせください。
(連絡先:総務部 担当〇〇 電話〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇)
最後に「やむを得ない事情があれば知らせてほしい」と添えておくと、本人が連絡しやすくなるだけでなく、会社が事情を確認する姿勢を示すことにもなります。
「退職」と「解雇」:2つの出口を整理する
連絡がついた場合も、つかない場合も、最終的には雇用関係をどう整理するかが問題になります。大きく分けると、本人から退職の申出があるケースと、会社が解雇するケースです。
| ケース | 主なルール | 実務のポイント |
|---|---|---|
| 本人から退職の申出(期間の定めのない契約) | 民法627条:申入れの日から2週間を経過すると雇用が終了 | 退職届を受け取り、退職日を確定する。就業規則に申出期間の定めがあれば、円満な退職のため案内する |
| 会社が解雇する | 労働基準法20条:少なくとも30日前の予告、または30日分以上の平均賃金(予告手当)の支払い | 「労働者の責に帰すべき事由」による解雇で労働基準監督署の認定を受ければ、予告・予告手当が不要になる |
本人から退職の申出があった場合
期間の定めのない雇用では、民法627条1項により、労働者はいつでも解約を申し入れることができ、申入れの日から2週間を経過すると雇用は終了します。就業規則に「退職は1か月前までに申し出ること」などの定めがある場合の扱いには、さまざまな考え方があります。実務上は、就業規則の定めを案内しつつ、過度に長い期間を主張しないほうが、トラブルを避けやすいとされています。
なお、有期契約の場合は、やむを得ない事由がある場合などを除き、契約期間の途中での退職には別のルールがあります。個別の契約内容によって判断が異なりますので、ご不明な場合は専門家にご相談ください。
会社が解雇する場合:解雇予告除外認定
労働基準法20条1項は、解雇する場合に少なくとも30日前の予告をするか、30日分以上の平均賃金を支払うことを求めています。ただし、「労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」は例外で、この例外を使うには、所轄の労働基準監督署長の認定(解雇予告除外認定)を受けます。
無断欠勤については、行政の運用上、「原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合」が認定の対象とされています。つまり、連絡を取って出勤を促した事実が重要になります。
- 申請先:事業場の所在地を管轄する労働基準監督署
- 主な提出書類:解雇予告除外認定申請書(様式第3号)、労働者名簿、そのほか事実を示す資料(連絡記録、督促状、出勤簿など)
注意:除外認定は「解雇予告の手続きが不要であること」を確認するものであり、解雇そのものが有効かどうかを決めるものではありません。解雇の有効性は、別途、解雇の理由や手続きの相当性などから判断されます。
また、本人が行方不明で書面が届かない場合など、解雇の意思表示をどう到達させるかが問題になることがあります。裁判所を通じた公示送達という方法もありますが、手間と時間がかかるため、この段階では弁護士や社労士へのご相談をおすすめいたします。
就業規則に「無断欠勤が続いた場合」の定めを置く
実務では、就業規則に「無断欠勤が〇日間続き、出勤を督促しても本人の所在が分からない場合は、退職したものとみなす」といった定め(いわゆる自然退職の規定)を置いている会社もあります。
こうした規定は、一律に有効と判断されるものではありません。日数の設定が短すぎる場合や、督促などの手順を踏まずに適用した場合には、解雇の規制との関係で問題になる可能性があります。規定を置く場合は、次の点を確認してください。
- 日数を合理的な長さにしているか(短期間の欠勤で適用しない)
- 適用の前に、本人・緊急連絡先への連絡と、書面による督促を行う手順にしているか
- 病気や事故など、やむを得ない事情がある場合を除く旨を定めているか
- 就業規則を従業員に周知し、労働基準監督署へ届け出ているか
規定の作り方は、会社の実情や職種によって異なります。自社に合った定め方は、個別にご相談いただくのが安心です。
退職が決まったあとの手続きと期限
退職や解雇の日が確定したら、次の手続きを進めます。期限が短いものから順に対応しましょう。
| 手続き | 提出先・内容 | 期限の目安 |
|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金保険の資格喪失届 | 日本年金機構(事業所を管轄する年金事務所)。資格喪失日は退職日の翌日 | 事実発生から5日以内 |
| 雇用保険の資格喪失届(離職証明書) | 事業所の所在地を管轄するハローワーク。離職証明書は原則として喪失届とあわせて作成 | 被保険者でなくなった事実があった日の翌日から起算して10日以内 |
| 未払い賃金などの精算 | 退職者から請求があった場合、賃金や預り金などを返還・支払い | 請求から7日以内(労働基準法23条) |
| 退職時の証明書 | 退職者から請求があった場合に交付 | 遅滞なく(労働基準法22条) |
| 貸与品・私物の対応 | 制服・鍵・社員証などの回収、私物の返送 | 本人と連絡できる範囲で早めに |
連絡不能のときに迷いやすい点
- 退職日をいつにするか:無断欠勤が始まった日とするのか、督促の期限日とするのか、退職届の日付とするのかで、資格喪失日や賃金の精算期間が変わります。事実と記録に基づいて決め、社内の記録に残してください
- 社会保険料:資格喪失日は退職日の翌日です。退職日の決め方によって保険料の対象となる期間が変わるため、日付を整理してから期限内に提出します
- 離職証明書:離職理由の記載は事実に基づいて行います。本人が確認する欄もありますので、連絡が取れない場合の扱いは、ハローワークに相談しながら進めてください
- 最後の給与:働いた分の賃金は、解雇の理由にかかわらず支払う必要があります。振込先が分かる場合は、給与日に通常どおり振り込むことが一般的です
企業が取り組むべき対応チェックリスト
| 優先度 | 対応内容 | 時期の目安 |
|---|---|---|
| 最優先 | 本人・緊急連絡先へ連絡し、安否を確認する | 無断欠勤の初日から |
| 最優先 | 連絡の日時・方法・結果を記録する | 連絡のたびに |
| 高 | 出勤を求める書面(督促状)を送る | 数日の無断欠勤が続いた時点 |
| 高 | 退職か解雇かを整理し、解雇の場合は予告・予告手当・除外認定の要否を検討する | 督促の期限後 |
| 高 | 社会保険・雇用保険の資格喪失届を期限内に提出する | 退職日確定後、5日・10日以内 |
| 中 | 給与精算、貸与品の回収、私物の対応 | 退職日確定後、早めに |
| 中 | 就業規則(無断欠勤の扱い)・緊急連絡先・身元保証書類を見直す | 落ち着いたら計画的に |
よくあるご質問
Q. 2週間連絡がなければ、自動的に退職扱いにしてよいですか?
A. 一律に退職扱いとすることはできません。就業規則の定め、督促などの手順、本人の事情によって判断が分かれます。連絡を試みた記録を残し、退職扱いとするのか解雇とするのかを整理したうえで、慎重に進めることをおすすめいたします。
Q. 解雇予告除外認定を受ければ、解雇は有効になりますか?
A. 除外認定は、解雇予告や予告手当が不要であることを確認するものです。解雇そのものの有効性を決めるものではありません。解雇の有効性は、理由や手続きの相当性を踏まえて個別に判断されます。
Q. 本人と連絡が取れないまま、社会保険の資格喪失届を出してよいですか?
A. 退職日(または解雇日)が確定していれば、本人の署名がなくても事業主が届出を行います。ただし、退職日の決め方によって喪失日が変わりますので、事実と記録に基づいて日付を整理してから提出してください。判断に迷う場合は、年金事務所や社労士にご確認ください。
Q. 無断欠勤の間の給与は支払う必要がありますか?
A. 働いていない日の賃金は、一般に「ノーワーク・ノーペイ」の考え方で支払わない扱いとするのが通常です。ただし、就業規則や賃金規程の定めによって取扱いが異なる場合があります。働いた日の賃金は支払う必要があります。
まとめ
- 連絡不能の従業員には、まず安否確認を行い、連絡の日時・方法・結果を記録する
- 出勤を求める書面を送り、督促した事実を残しておく
- 退職なら民法627条(申入れから2週間)、解雇なら労働基準法20条(30日前の予告または予告手当)を踏まえて整理する
- 「2週間以上の無断欠勤で督促に応じない」場合は、解雇予告除外認定の対象となり得るが、解雇の有効性を保証するものではない
- 退職日が決まったら、社会保険は5日以内、雇用保険は10日以内に喪失届を提出する
連絡不能への対応は、「慌てて結論を出さず、記録を残しながら段階を踏む」ことが基本です。この機会に、就業規則や緊急連絡先の整備もあわせてご確認ください。
制度の詳細や自社での対応についてご不明な点がございましたら、カインド社労士事務所までお気軽にご相談ください。
この件のご相談は、初回無料です(オンライン・出張相談にも対応しています)
自社の場合はどう対応すべきか、就業規則や手続きの見直しが必要かなど、お気軽にご相談ください。


