【2026年版】ハラスメント防止規程の作り方と見直し点|社労士が解説
社労士 鈴木 貴雄
東京都社会保険労務士会
この記事の執筆者:社労士 鈴木 貴雄
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2026年10月からカスハラと求職者へのセクハラの防止措置が加わり、会社が防止措置を求められるハラスメントは6種類になりました。パワハラ・セクハラだけを定めた古いハラスメント防止規程のままでは、法律が求める内容が欠けている場合があります。この記事では、規程に必要な要素、就業規則との関係、放置した場合のリスクを解説いたします。
この記事のポイント
- 防止措置が義務となっているハラスメントは、セクハラ・マタハラ・育介ハラ・パワハラ・カスハラ・求職者等へのセクハラの6種類です
- いずれも企業規模を問わず、すべての事業主が対象です
- 行為者を懲戒するには、懲戒の種別と事由を就業規則に定め、周知しておくことが前提になります
- 別規程として作る場合も就業規則の一部となるため、本則との整合や届出の要否を確認する必要があります
ハラスメント対策は、法改正のたびに対象が広がってきました。2007年のセクハラ、2017年のマタハラ・育介ハラ、2020年(中小企業は2022年)のパワハラに続き、2026年10月1日からはカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)と、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置も義務になりました。
一方で、ハラスメント防止規程を数年前に作ったまま、見直していない会社も少なくありません。規程があっても、新しく義務になったハラスメントが規程の対象に入っていない、懲戒の根拠が就業規則の本則とつながっていないといった状態では、いざ問題が起きたときに会社として適切に対応できないおそれがあります。
本記事では、ハラスメント防止規程に何を盛り込む必要があるのか、就業規則とどう関係するのか、そして古いまま放置した場合にどのようなリスクがあるのかを、順を追って解説いたします。
※本記事は2026年11月6日時点の情報に基づいています。
防止措置が義務となっているハラスメントの全体像
まずは、会社が防止措置を講じる義務を負っているハラスメントを整理します。根拠となる法律がそれぞれ異なる点がポイントです。
| ハラスメントの種類 | 根拠となる法律 | 義務化の時期 | 対象 |
|---|---|---|---|
| セクシュアルハラスメント(セクハラ) | 男女雇用機会均等法 | 2007年4月 | すべての事業主 |
| 妊娠・出産等に関するハラスメント(マタハラ) | 男女雇用機会均等法 | 2017年1月 | すべての事業主 |
| 育児・介護休業等に関するハラスメント(育介ハラ) | 育児・介護休業法 | 2017年1月 | すべての事業主 |
| パワーハラスメント(パワハラ) | 労働施策総合推進法 | 2020年6月(中小企業は2022年4月) | すべての事業主 |
| カスタマーハラスメント(カスハラ) | 労働施策総合推進法 | 2026年10月 | すべての事業主 |
| 求職者等に対するセクハラ | 男女雇用機会均等法 | 2026年10月 | すべての事業主 |

いずれも努力義務ではなく、法律上の措置義務です。従業員が数名の会社でも対象から外れることはありません。
なお、カスハラと求職者等へのセクハラについては、当サイトの「カスハラ対策の義務化で企業が行うこと」「求職者へのセクハラ防止義務と規程見直し」で、それぞれ詳しく解説しています。
法律が求める「措置」とハラスメント防止規程の関係
各法律と厚生労働省の指針は、事業主が講ずべき措置を定めています。ハラスメントの種類ごとに細かな違いはありますが、共通する柱は次のとおりです。
- 方針の明確化と周知・啓発:ハラスメントを行ってはならないという方針と、行為者に厳正に対処する方針・対処の内容を定め、従業員に知らせる
- 相談体制の整備:相談窓口をあらかじめ定め、適切に対応できるようにする
- 事後の迅速かつ適切な対応:事実関係の確認、被害者への配慮、行為者への措置、再発防止
- あわせて講ずべき措置:相談者・行為者のプライバシー保護、相談したことなどを理由とする不利益取扱いの禁止とその周知
このほか、マタハラ・育介ハラではハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置(業務体制の整備など)、カスハラでは抑止のための措置、求職者等へのセクハラでは面談などの求職活動のルールの明確化が求められています。
ハラスメント防止規程は、これらの「措置」を会社のルールとして形にしたものです。特に「行為者への対処の方針と内容を就業規則等に定めて周知すること」は、指針で具体的に示されている措置の一つであり、規程の整備がそのまま義務の履行に直結します。
反対にいえば、規程の対象にカスハラや求職者等へのセクハラが入っていない場合、その分の方針の明確化・周知が済んでいないと評価されるおそれがあります。
ハラスメント防止規程に欠かせない要素
ハラスメント防止規程の「作り方」で最も大切なのは、法律と指針が求める措置を漏れなく反映させることです。規程の骨格となる要素は、おおむね次のとおりです。

| 要素 | 規程で押さえる内容 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 目的・対象者 | 規程の目的と、適用される人の範囲 | パート・契約社員・派遣社員、役員の扱い |
| 定義と禁止行為 | 6種類のハラスメントの定義と禁止する行為 | カスハラ・求職者等へのセクハラが入っていない |
| 相談窓口 | 窓口の担当者・連絡方法・外部窓口の有無 | 窓口がハラスメントの種類ごとに分かれている |
| 事実確認と事後対応 | 調査の進め方、被害者への配慮、再発防止 | 事実が確認できなかった場合の再発防止策 |
| 懲戒 | 行為者に対する懲戒の取扱い | 就業規則の懲戒規定とつながっていない |
| プライバシー・不利益取扱いの禁止 | 相談者等の情報の保護、不利益取扱いをしないこと | 調査協力者や証言者への配慮 |
| 顧客等・求職者への対応 | カスハラへの対応方針、採用活動のルール | 電話・メール・SNSでの言動、オンライン面接 |
また、厚生労働省の指針では、ハラスメントは複合的に起きることがあるため、パワハラ・セクハラ・マタハラなどの相談に一元的に応じられる体制を整えることが「望ましい取組み」とされています。法律ごとに窓口がばらばらになっている場合は、あわせて見直しておきたい点です。
ただし、自社に合った規程にするには、業種や顧客との接点、採用活動の方法、組織の規模などに応じた調整が欠かせません。他社のひな形をそのまま使うと、実態に合わない手順や、自社では運用できない窓口が書かれてしまうことがあるため注意が必要です。
就業規則との関係:懲戒の根拠と届出
ハラスメント防止規程を整える際に、特に注意したいのが就業規則本体との関係です。
懲戒するには就業規則の定めと周知が前提
最高裁判所は、使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則に懲戒の種別と事由を定めておくことが必要であり、その就業規則が拘束力を持つには労働者への周知の手続きがとられていることが必要だと判断しています(フジ興産事件・最高裁平成15年10月10日判決)。
つまり、ハラスメント防止規程に「行為者は懲戒処分とする」と書いてあっても、就業規則の懲戒事由とつながっていなかったり、従業員に周知されていなかったりすると、懲戒処分の有効性が争われたときに会社が不利になる可能性があります。
別規程にする場合は本則とのつながりを確認
ハラスメントに関する定めを、就業規則本体とは別の規程にまとめる会社も多くあります。千葉労働局の資料では、懲戒規定を就業規則の本則以外に定める場合は、本則にその旨の委任規定を置くことが労働基準法上必要と注意喚起されています。
また、別規程として定めた規程も就業規則の一部として扱われます。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、過半数組合または過半数代表者の意見書を添えて、労働基準監督署へ届け出る必要があります。就業規則の作成・届出の基本については「就業規則がない会社のリスクと作成・届出の手順」もご覧ください。
ハラスメント防止規程だけを新しくしても、就業規則本体の懲戒事由や服務規律が古いままでは、全体として整合がとれません。規程の見直しは、就業規則の改定・見直しとあわせて行うことをおすすめいたします。
古い規程のまま放置した場合のリスク
規程を見直さないまま放置した場合、次のようなリスクが考えられます。

行政による指導・勧告・公表
防止措置を講じていない場合、都道府県労働局による報告の求め、助言・指導・勧告の対象となります。勧告に従わない場合は、企業名が公表されることがあります。また、報告を求められたのに報告しない、または虚偽の報告をした場合は、20万円以下の過料の対象となります(男女雇用機会均等法・労働施策総合推進法)。
行為者への処分ができない・争われる
前述のとおり、就業規則に根拠がない、または周知されていない状態では、行為者への懲戒処分の有効性が争われる余地が生まれます。被害者を守るための対応がとれず、職場の信頼を失うことにもつながります。
民事上の責任と人材の流出
ハラスメントへの対応が不十分な場合、被害を受けた従業員から、会社の安全配慮義務違反などを理由に損害賠償を請求される可能性があります。また、相談しても対応してもらえない職場は、離職や採用難の原因にもなりかねません。
自社の規程を点検するチェックリスト
まずは、現在の就業規則とハラスメント防止規程を手元に用意し、次の項目に当てはまるかを確認してみてください。「いいえ」や「わからない」が一つでもあれば、見直しを検討する時期です。
| 優先度 | 点検する内容 | 時期の目安 |
|---|---|---|
| 最優先 | 規程の対象にカスハラと求職者等へのセクハラが入っているか | すぐに(2026年10月から義務) |
| 最優先 | 就業規則の懲戒事由に、ハラスメント行為が含まれているか | すぐに |
| 高 | 別規程の場合、就業規則の本則に委任の定めがあるか | 早めに |
| 高 | 相談窓口の担当者・連絡先が現在の体制と一致しているか | 早めに |
| 高 | 規程を従業員に周知しているか(掲示・配布・社内システムなど) | 早めに |
| 中 | 規程を変更したとき、意見書を添えて労働基準監督署へ届け出ているか(常時10人以上の事業場) | 改定のたびに |
| 中 | 管理職・面接担当者・顧客対応の担当者への研修を行っているか | 年1回程度 |
見直しは、おおむね次の流れで進みます。

規程の文言をどう定めるかは、会社の業種や組織、既存の就業規則の書き方によって大きく変わります。文言の調整や届出の要否の判断は、専門家に相談しながら進めると、手戻りを防ぐことができます。
よくあるご質問
Q. 従業員が10人未満でも、ハラスメント防止規程は必要ですか?
A. 就業規則の作成・届出義務は常時10人以上の事業場が対象ですが、ハラスメントの防止措置は企業規模を問わずすべての事業主の義務です。方針の明確化や相談窓口の周知は、10人未満の会社でも必要になります。行為者への懲戒を予定する場合は、その根拠を就業規則などに定めておくことが前提になりますので、規程の形での整備をおすすめいたします。
Q. ハラスメントの種類ごとに、別々の規程を作る必要がありますか?
A. 法律上、規程を分けることは求められていません。1つの規程にまとめることも、種類ごとに分けることもできます。ただし、厚生労働省の指針では相談に一元的に応じられる体制が望ましいとされているため、窓口や手続きは統一しておくと運用しやすくなります。どの形が適しているかはケースによって異なります。
Q. 規程を整えたら、それで義務を果たしたことになりますか?
A. 規程の整備は措置の一部であり、それだけで十分とはいえません。相談窓口が実際に機能していること、相談があったときに事実確認や再発防止を行うこと、従業員への周知・研修を続けることなど、運用まで含めて措置と考える必要があります。
まとめ
- 防止措置が義務となっているハラスメントは6種類。2026年10月からカスハラと求職者等へのセクハラが加わった
- 企業規模を問わず、すべての事業主が対象
- 規程には、方針・定義・相談窓口・事後対応・懲戒・プライバシー保護などを漏れなく反映させる
- 懲戒するには就業規則への定めと周知が前提。別規程の場合は本則とのつながりと届出を確認する
- 放置すると、行政の指導・勧告・公表、懲戒処分の有効性をめぐる争い、民事上の責任などのリスクがある
ハラスメント防止規程は、一度作れば終わりではなく、法改正にあわせて更新していく必要があります。今回の改正を機に、就業規則とあわせて全体を点検されることをおすすめいたします。
制度の詳細や自社での対応についてご不明な点がございましたら、カインド社労士事務所までお気軽にご相談ください。
この件のご相談は、初回無料です(オンライン・出張相談にも対応しています)
自社の場合はどう対応すべきか、就業規則や手続きの見直しが必要かなど、お気軽にご相談ください。
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